2016年09月07日

量子ビットを設計する 2 「参入障壁」

さてさて、フランスからの学生さんが帰国した後すぐにカナダからの学生さんがインターンシップとして参加してくれています。彼の5か月間で、私たちのかなり重要である量子ビット系の設計をお願いしています。私たちの目標は5年で18量子ビットです。今年度中に4量子ビットをなんとか動かそうという話をしており、その設計を終着点としました。

さて前回は量子ビットの簡単な説明をしましたね。今、超伝導量子ビットは1999年の誕生から16年で、飛躍的な進化をとげました。その大きな理由に、メゾスコピック物理からの脱却があります。

私たちの相手は固体です。固体ですのでとても取扱いが煩雑です。欠陥・格子・スピンや準粒子、磁束や電荷ゆらぎに測定ノイズ、いろんな要素が複雑に絡み合って邪魔をしてきます。しかしすごいのです、私も知らないようなところで様々な努力がなされ、そのレシピがこれらの問題を次々とクリアしてきたのです。そうすると、私みたいな無学な人が深い固体物理の知識なしに参入することができるのです。

今、量子ビットの設計で使われている言葉は、10年前と大きく変わっていると思います。回路量子電磁力学と呼ばれる(比較的)新しい言語の上で、設計がなされます。超伝導の回路は、簡単なインダクタンス、キャパシタンス、そしてジョセフソン接合の上でモデル化されます。さらにもっと簡単に、調和振動子に非調和性が入ったもので記述されるのです。

もう、超伝導量子ビットを設計しているような気分じゃないんですよね。回路設計をしているような気分でもないです。どっちかというと、ハミルトニアン上の結合や定数を直接いじくっているような感覚です。直接的に量子ゲートに関与するパラメータを「編集」しているような気分になるのです。

これもこれまでの深い知識とレシピのおかげです。そうやってこのコミュニティはその物理系特有の問題から脱却し、新たな言語で自分自身を記述することに成功しました。噂では、図面を描けばハミルトニアンが計算される、そんなソフトウェアも販売間近だということです。そこまで、参入障壁が下がっているのです。

次回からは、その編集の様子を綴ります。

jjq303dev at 23:50│Comments(0)量子ビット 

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プロフィール
日々徒然過ごしている研究員。

趣味は星、自転車、コーヒー。